それにしても、なぜFinTechはここまで注目されるようになったのでしょうか?理由は様々ありますが、次の4つが主な理由として挙げられるのではないでしょうか。

1)リーマンショック
2)ミレニアル世代の台頭
3)スマートフォン、ソーシャルネットワークの発達
4)ITシステムの変化

2008年のリーマンショックは世界中に大規模な経済的打撃を与えたのは記憶に新しいところです。株価は軒並み暴落、世界中に失業者があふれました。その後の政府と金融機関の対応を見た人々が既存の金融機関に不信感を抱いたのが原因の一つと言えそうです。

投資者に莫大な損害を与えておきながら、投資会社や金融機関のトップは相変わらず法外な報酬を受け取り続けていました。ここから従来の金融機関と異なる、もっと透明性の高い企業や金融商品が求められるようになりました。

また、金融機関は多くの従業員をリストラしました。ここから、新しい金融会社w創業する人や、FinTechのベンチャー企業に参加する人が多く出ました。この人たちが今、金融業界で創造的破壊の担い手になっていると考えられます。

ミレニアル世代とは、アメリカで1980年~1990年代(2000年代初頭という説もある)に生まれた若い世代の人たちです。この人たちは、別名デジタルネイティブとも呼ばれます。もの心ついたときからインターネットに慣れ親しみ、不景気や就職難など若いうちから辛酸をなめている人も多くいるので、堅実であり、既存の価値観や権威とは距離をおいています。フェイスブックの創業者マーク・ザッカーバーグはまさにこの世代です。

また、アメリカは他民族国家であり、アメリカのこの世代は白人意外にも黒人、ヒスパニック系、アジア系など人種も多種多様で価値観の多様性に抵抗がありません。また、既存の政治や大手金融会社に不信感を抱いています。こうした人たちがFinTechブームの追い風になっていると考えられるのです。

スマートフォンの普及とともに、SNSを利用する人も爆発的に増えました。SNSはどこの学校に通っているか、どんな仕事をしているか、何を買ったか、誰とどこへ行ったかなどの個人情報が満載です。(これをライフログとよびます)ここから、個人の生活の状況を推測し、その人にあった金融サービスを提供することが可能になるのです。逆にその人にどんなリスクがあるのかも推測することもできます。

ITシステムの変化の筆頭に挙げられるのはクラウドコンピューティングでしょうか。クラウドコンピューティングとは、ネットワークを通じてサーバやアプリケーションなどを活用するITインフラです。さらにビッグデータがそこに加わります。ビッグデータは『データ量が巨大である(volume)』『高頻度である(velocity)』『多様性がある(variety)』の3つの要素を満たす必要があります。

ビッグデータの対象になるものは多種多様ですが、個人の金融行動の推察にも大きな威力を発揮します。例えば、SNSの書き込みをもとに、その人の交友関係、消費行動を分析し、どんな金融サービスを提供したらいいかを判断できるのです。

従来のネットサービスはサーバーやネットワークに莫大な費用がかかり、インフラを構築・維持する技術者を雇わなくてはいけないので人件費もかかります。しかし、クラウドコンピューティングはそれらの問題を払拭してくれたのです。

こうした技術の進歩や環境の変化、価値観の変化がFinTechの躍進を後押ししているのです。