FinTechの発展は始まったばかりです。将来はどんなサービスがでてくるのか正確に予想するのはほぼ不可能です。FintTechが発展していくことの意味は何でしょうか?人々の生活をより便利にすることでしょうか?それも意義のあることですが、FintTechはもっと大きな社会貢献ができる可能性があります。『今まで適切な金融サービスを受けられなかった人にも質の良いサービスを届ける』ことです。

たとえば、インドは世界でも有数のIT大国となりましたが、その一方で銀行口座すら持てない人が人口の47%もいます。また、中小企業や個人事業主の90%以上が銀行などの金融機関との取引がありません。識字率も低く、必要な書類も一人で満足に仕上げることができません。スマホやタブレットを利用すれば、生態認証を利用して口座を開いたり、金融サービスを受けることができる仕組みを作ることができます。

インド以外にも銀行口座を持たない人口の割合が高い国はたくさんあります。アジアではフィリピン、ベトナムも口座の保有率が30%台と低い割合にとどまっています。ASEANが中心となってこの問題を解決しようとしています。アフリカも貧困率の高い国が多い地域ですが、ここでもモバイルを利用した金融サービスが普及してきています。サービスの内容は決済、小口融資、送金などでユーザーはすでに17,000人を突破しています。バングラデシュでもモバイル銀行の利用が広がっています。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団の貧困層ファイナンス部門次長、コスタ・ペリッチは、銀行を利用できなかった貧困層にFInTechを持ち込めば、生活が改善されるという内容の発言をしています。

先進国でも格差が広がり、深刻な社会問題となってきています。特に日本では子どもの貧困が急速に進んでいます。スマホを利用することで、その家庭に見合った生活保護や子ども手当て、年金を届けることができるようになります。貧困層を狙った悪質な貧困ビジネスもブロックチェーンを応用すれば防ぐことができるようになるかもしれません。

FinTechは銀行などの従来の金融機関からは、いまのところ脅威だと思われています。FinTechが発達していけば、いままで自分たちが作り上げてきたイノベーションが根底から覆されてしまうからです。しかし、ピンチはチャンスをつかむきっかけにもなります。人口知能やSNS、モバイルを利用した独自サービスを考え出せれば今まで融資をすることができなかった人にサービスを提供して利益を得ることができるかもしれないのです。

日本で一番資産を持っているのは65歳以上の高齢者ですが、年金の受け取り手続きをもっと簡単にするなど、お年寄りにも利用しやすい環境を作りだすことはできるはずです。少子高齢化のすすむ日本で海外と同じようなFinTechをいきなり導入するのは無謀ですが、日本の人口の多くを占め、資産の多くを保有する層でもあります。この人たちにアプローチする方法を考えれば生き残る可能性はあります。また、貧困に苦しむ若い層や母子家庭への金融サービスを作ることも不可能ではないはずです。誰にどんなサービスが必要なのか、細分化されたサービスを提供することが日本でFinTechを発達させるカギではないでしょうか。