今お財布にいくら入っているかはっきりわからないのはなぜ?

最近は昔に比べて、お金をじかに見ることが少なくなってきました。給料は決まった日に口座に振り込ます。

高熱費は自動引き落としされるか、カードで支払っている人も多いのではないでしょうか。

電車に乗るのに切符を買うこともあまりなくなりました。suicaやpasmoにチャージしておけば、いつでも電車に乗って好きなところへいくことができます。

最近はiPhoneでsuicaが利用できるようになりました。スマホを改札にかざすだけでJRにも地下鉄にも自由に乗ることができます。

iPhoneが世に出たのが2007年。まだ十年もたってないのにスマホは私たちの生活にしっかりと根をおろしています。

アプリの種類も数え切れないほど多種多様なものが出回っています。今ではウェアラブル端末と連動して健康管理ができたり、レシートの写真をとれば自動的に支出を計算してくれる家計簿アプリもあります。

スマホがなければ生活できない!という人も多いのではないでしょうか。

現金が消える?スマホがお財布になる日がやってくる!?

確かになくなったら困るけど、まだそれほどでもない…。メールと電話しかしないから、まだガラケーで充分!という人まだいるかもしれませんが、いずれは小学生にもなっていない小さな子どもから、杖をついたお年寄りまで、世界中の人がスマホが手放せなくなる日が来るかもしれません。

世界中の人がそこまでスマホ中毒にるほど魅力的なスマホが発売されるの!?そういうわけではありませんが、スマホは今以上に私たちの生活に重要な役目を果たすようになるかもしれないのです。それも、先進国よりむしろ発展途上国といわれている国でです。

発展途上国は銀行はあっても国民の半分近くが銀行口座をもっていない国がたくさんあります。

でもスマホがあれば簡単な手続きで口座が持てて、お給料を振り込んでもらったり、家族に安い手数料で仕送りができたり、必要とあればお金を貸してもらえたりするのです。

あれ、でも現金を引き出さないと生活できなくない?スマホで現金は引き出せないけれど?

そう、近い将来、形のあるお金は世界から消えてしまうかもしれません。

スーパーでの買い物もレジがなくなって、スマホをかざすだけになるのが普通のことになるかもしれないのです。

なぜか?いま、世界中でFinTechがすごい勢いで広がりつつあります。FinTechはFinanceとTechnologyを掛け合わせた造語です。

いま、銀行、クレジットカード、金融商品、保険、お金にかんするありとあらゆるものがFinTechによって劇的な変化を遂げようとしています。

日本ではまだそれほど加熱している様子は見えませんが、アメリカではFInTechのベンチャー企業が数え切れないほど企業しています。

いままでにない新しいサービスをつくるべく、しのぎを削っているのです。FinTechがわたしたちの生活に入ってくると、どんな変化がおこるのか?

スマホで何もかもすませるのは怖い…と思っているのは今のところ日本人だけのようです。 海外ではスマホを利用した新しい金融サービスが生活に入ってきています。

すでに日本でも利用されはじめているものもあります。FInTechがわたしたちの生活に何をもたらすのか、見ていきましょう。

どんどん発展していくFinTech。将来はどうなる?

FinTechの発展は始まったばかりです。将来はどんなサービスがでてくるのか正確に予想するのはほぼ不可能です。FintTechが発展していくことの意味は何でしょうか?人々の生活をより便利にすることでしょうか?それも意義のあることですが、FintTechはもっと大きな社会貢献ができる可能性があります。『今まで適切な金融サービスを受けられなかった人にも質の良いサービスを届ける』ことです。

たとえば、インドは世界でも有数のIT大国となりましたが、その一方で銀行口座すら持てない人が人口の47%もいます。また、中小企業や個人事業主の90%以上が銀行などの金融機関との取引がありません。識字率も低く、必要な書類も一人で満足に仕上げることができません。スマホやタブレットを利用すれば、生態認証を利用して口座を開いたり、金融サービスを受けることができる仕組みを作ることができます。

インド以外にも銀行口座を持たない人口の割合が高い国はたくさんあります。アジアではフィリピン、ベトナムも口座の保有率が30%台と低い割合にとどまっています。ASEANが中心となってこの問題を解決しようとしています。アフリカも貧困率の高い国が多い地域ですが、ここでもモバイルを利用した金融サービスが普及してきています。サービスの内容は決済、小口融資、送金などでユーザーはすでに17,000人を突破しています。バングラデシュでもモバイル銀行の利用が広がっています。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団の貧困層ファイナンス部門次長、コスタ・ペリッチは、銀行を利用できなかった貧困層にFInTechを持ち込めば、生活が改善されるという内容の発言をしています。

先進国でも格差が広がり、深刻な社会問題となってきています。特に日本では子どもの貧困が急速に進んでいます。スマホを利用することで、その家庭に見合った生活保護や子ども手当て、年金を届けることができるようになります。貧困層を狙った悪質な貧困ビジネスもブロックチェーンを応用すれば防ぐことができるようになるかもしれません。

FinTechは銀行などの従来の金融機関からは、いまのところ脅威だと思われています。FinTechが発達していけば、いままで自分たちが作り上げてきたイノベーションが根底から覆されてしまうからです。しかし、ピンチはチャンスをつかむきっかけにもなります。人口知能やSNS、モバイルを利用した独自サービスを考え出せれば今まで融資をすることができなかった人にサービスを提供して利益を得ることができるかもしれないのです。

日本で一番資産を持っているのは65歳以上の高齢者ですが、年金の受け取り手続きをもっと簡単にするなど、お年寄りにも利用しやすい環境を作りだすことはできるはずです。少子高齢化のすすむ日本で海外と同じようなFinTechをいきなり導入するのは無謀ですが、日本の人口の多くを占め、資産の多くを保有する層でもあります。この人たちにアプローチする方法を考えれば生き残る可能性はあります。また、貧困に苦しむ若い層や母子家庭への金融サービスを作ることも不可能ではないはずです。誰にどんなサービスが必要なのか、細分化されたサービスを提供することが日本でFinTechを発達させるカギではないでしょうか。

FinTechは個人の消費にどんな影響を与えるのか

「google、facebookが今後、われわれのライバルになる」これはアメリカの大手金融企業、JPモルガンのCEOが言ったことです。金融業はいまや金融業者だけの寡占事業ではなくなってきています。AIやビッグデータなどの最先端のテクノロジーと、洗練されたデザインのスマホやタブレッットで「早い・安い」サービスを消費者に提供するベンチャー企業やSNSが金融業に続々と参戦してきています。

異業種が参入してくると金融はどう変わってくるのか?ほとんどが海外の例ですが、具体的に見てみましょう。

・銀行
店舗を持たない『デジタルバンク』が台頭してきている。スマホ一つですべての手続きが完了できる。支出予定額を入力しておくと、買い物などで店に入るとき使用可能な金額(口座の総額ではない)を提示してくれたり、主力を定期預金だけにしぼり、金利を他の銀行より高くするなど、個人の消費行動に特化したものが多い。海外の銀行では口座がマイナスになると罰金のようなものを取られることが少なくないため、このようなサービスが喜ばれる。

・証券会社
こちらもスマホ一つですべての手続きが可能なモバイル専門証券会社が登場している。店舗がないばかりでなく、ネット証券のようにITシステムの構築・メンテナンスにお金をかけなくて済むため、手数料の無料化を可能にした。
日本でも2016年6月に国内初のスマートフォン専業証券会社『ワン・タッブ・バイ』が営業を始めている。口座開設の登録もすべてスマホで完結できる。

・保険
自動車保険…走行距離や個人の運転技術に合わせて保険料が変動するものが登場
生命保険…ウェアラブル端末や家の中に取り付けたセンサーで個人のデータをとり、保険料がきめられる保険が登場している。
また、友人同士でインターネット上でグループを作り保険金を出し合うタイプの保険もある。供出した保険料は半分はグループの代表が管理し、半分は外部の保険会社に支払われる。メンバーから保険請求があった場合、小額のものはプールした保険金から支払い、プールした金額を超えるような場合は外部の保険会社が支払う。1年外部の保険会社に支払い請求がなければ、年末に保険会社にかけた金額の一部(最大50%)がもどってくる。
外部保険会社に支払った金額が保険会社が事前に決めておいた額を超えたら、その超過分を保険会社が支払う。

こうしてみると、従来の金融業者にはできない決め細やかなサービスを売りにしているものが多いことがわかります。まさにかゆいところに手が届く!といったかんじですね。

特に最後の生命保険は、人数を集めれば集めるほどキャッシュバックされる金額が大きくなるのですから、張り切って人を集めたくなりそうです。保険会社もグループが大きくなればなるほど入ってくる保険料も多くなりますし、お客が自主的にお客をあつめてくれるわけですから、膨大な広告費や人件費を省くことができます。

事故を起こしたらグループ全体に迷惑がかかると思えば、安全運転をせざるをえません。業者側にもお客がわにもメリットのあるwin-winな業態です。FinTechは業者、ユーザー双方にメリットがなければ大きな発展はのぞめないのですね。

日本の金融企業はFinTechにどう向き合っている?

日本の金融業のFInTech対策は海外に比べるとかなり遅れているといわれています。日本はまだまだ現金第一主義であり、規制も厳しく、銀行への信頼もあついことからそれはある程度仕方のないことかもしれません。しかしそれでもFinTechの波は確実に押し寄せてきています。

げんに、金融庁は2015年あたりから、銀行法を見直すことを考えていたようです。日本の銀行は、銀行法により、他業種への参入を禁じられています。しかし、アマゾンや楽天などネット通販の大手はECサイトに出店する個人事業者への融資をかなり以前から開始しています。銀行以外の企業が銀行業務に参入できるのに、銀行が他業種に参入できないのは不公平ではないかという声は以前から上がっていました。

他業種に参入できないだけでなく、他業種への出資も大きな制限がかけられています。銀行持ち株会社が15%、銀行本体は5%までしか他業種への出資をみとめられていません。いわゆる『5%ルール』です。これがFInTechs産業の日本での発展に大きな足かせとなっています。

現在の規制をそのままにしておくと、日本は世界的なFInTechの潮流に乗ることができません。そこで、金融庁は他業種でも金融業のサービス向上につながるものであれば出資を可能とする方針がまとめられました。2016年3月にはこうした方針を盛り込んだ改正銀行法が国会に提出され、5月には参議院本議会で可決されました。

今後は日本の金融業もFinTech関連のベンチャー企業と連携して事業をすすめることができるのです。2015年には金融庁はFinTechに関する相談窓口『フィンテックサポート』の設置も発表しています。FInTechが発展して消費者がより良いサービスを受けられることになれば喜ばしいことですが、日本と海外では金融業の形態も国内事情も大きく違います。日本は日本独自のFInTechの発展を考える必要があります。

たとえば、アメリカでFinTechが大きく発展したのは、デジタル機器やスマホに慣れ親しんだミレニアル世代が人口の一番多く(約40%)を占めていることが一因です。しかし小子高齢化がすすんでいる日本ではミレニアル世代は31%ほどにとどまっています。

また、スマホやタブレットの保有率も海外にくらべるとはるかに少なく、海外ではスマホの保有率が90%に達する国もあるのに対し、日本では50%にもなるかどうかです。当然ながらモバイルバンキングのようなサービスの利用率も海外に比べると極端に低くなっています。

理由としては、ATMが多く、コンビニに設置してあるものも含めて、24時間気軽に利用できること、セキュリティに対する不安がぬぐえないこと、現金第一主義の高齢者が多いことなどがあるようです。日本で一番人口が多いのは高齢者ですし資産を一番多く持っているのも団塊の世代か、それ以上の世代です。日本ではミレニアル世代よりも高齢者に狙いを定めた方針をとるほうが現実的なのです。

団塊の世代、それ以上の世代はスマホの保有率は低くても、PCの保有率は結構高いのです。インターネットを趣味にあげる人も意外と多くいます。インターネットを日常的に利用する高齢者はPCを持っていない高齢者に比べると投資商品の保有率も高くなっているというデータもあります。スマホを利用した『早い・安い』がかならずしも成功するとはいいがたいのが日本の状況です。

まだ問題点もあるFinTech。何に注意すべき?

FinTechが発達した原因の一つに2008年のリーマンショックがあります。それまでのアメリカの金融業の規制はかなりゆるく、一部の金融機関が連邦準備制度の監視を受けているだけでした。しかしリーマンショック以降はすべての金融機関が厳しい監視の下に置かれるようになりました。

しかし監視が厳しくなったぶん、金融機関も一般への貸付の審査基準を引き上げたため、所得が低く、本当に融資が必要な借りられない人がという人が増えてしまいました。そこへ登場したのがソーシャルレンディングのような従来の法規制の枠にはまることのない新しい金融サービスです。FinTechは既存の金融サービスをうけることの出来ない、所得の少ない人や大学を卒業しても定職に付くことができない若者などのの声をうけて発展してきた側面があります。

FinTechの発達で、今までにない革新的なサービスが続々と登場してきています。それは喜ばしいことではあるのですが、FinTechはここ数年で急激に伸びてきた新しい産業である分、何か不祥事が明るみに出ても対応に苦慮するケースも出てきています。アメリカのある金融機関はFinTechの法規制に関してこんな問題点をあげています。

・FinTechを監督する機関がはっきりせず、どの機関の法規制に従えばいいのかわからない
・各監督機関の基準がバラバラでどれに従えばいいのかわからない
・多くの法規制がIt産業以前に制定されたものであり、FInTech産業に適合しない
・ほとんどがベンチャー企業であるため、エンジニアなど技術者を含む数人で対処する必要がある

法律がFinTech産業においついていないということですね。無法地帯とまでは言わないまでも、何か問題が起こったとき、どんな対応をとればいいのか政府もよくわかっていないのです。しかし、某ソーシャルレンディング企業が金融業の許可をとっていないことを理由に9カ月の休業を余儀なくされたという例もあります。

また、ベンチャー企業の宿命ではありますが、競争が非常にはげしく、生き残れる企業はごくわずかというのも事実です。インターネット上にしか存在しない会社もたくさんあります。出資したのに、ある日会社がインターネットから消えていた!というのもよくある話なのです。

ここまではアメリカの話ですが、日本ではどうでしょうか?アメリカのFinTechは一般の人々の従来の金融業に対する不満と、それにともなう新しいサービスの需要をうけて伸びてきました。しかし、日本はどちらかというと金融庁が旗振り役となってFInTechを推進しています。日本とアメリカをは文化も考え方も違うので簡単に比べることはできませんが、日本はまだまだ現金第一主義、預金神話が生きています。事業融資はともかく、借金に対するマイナスイメージもぬぐえません。

言いかえると日本人のはお金に対する感性がまだまだ未発達であるともいえるのです。日本での一番の問題はこの点かもしれません。今後、どんなFInTechが登場してくるのか想像もつきせんが、金融庁主導のままFInTechを受けいれてくと、何かとんでもないことに巻き込まれる可能性もあります。お金を第三者に預けっぱなしにするのではなく、どう使うか、どうやって管理するかなど、お金のことを自分自身の問題として捉えられないと、いたずらに情報や技術にふりまわされるだけになります。

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