日本の金融業のFInTech対策は海外に比べるとかなり遅れているといわれています。日本はまだまだ現金第一主義であり、規制も厳しく、銀行への信頼もあついことからそれはある程度仕方のないことかもしれません。しかしそれでもFinTechの波は確実に押し寄せてきています。

げんに、金融庁は2015年あたりから、銀行法を見直すことを考えていたようです。日本の銀行は、銀行法により、他業種への参入を禁じられています。しかし、アマゾンや楽天などネット通販の大手はECサイトに出店する個人事業者への融資をかなり以前から開始しています。銀行以外の企業が銀行業務に参入できるのに、銀行が他業種に参入できないのは不公平ではないかという声は以前から上がっていました。

他業種に参入できないだけでなく、他業種への出資も大きな制限がかけられています。銀行持ち株会社が15%、銀行本体は5%までしか他業種への出資をみとめられていません。いわゆる『5%ルール』です。これがFInTechs産業の日本での発展に大きな足かせとなっています。

現在の規制をそのままにしておくと、日本は世界的なFInTechの潮流に乗ることができません。そこで、金融庁は他業種でも金融業のサービス向上につながるものであれば出資を可能とする方針がまとめられました。2016年3月にはこうした方針を盛り込んだ改正銀行法が国会に提出され、5月には参議院本議会で可決されました。

今後は日本の金融業もFinTech関連のベンチャー企業と連携して事業をすすめることができるのです。2015年には金融庁はFinTechに関する相談窓口『フィンテックサポート』の設置も発表しています。FInTechが発展して消費者がより良いサービスを受けられることになれば喜ばしいことですが、日本と海外では金融業の形態も国内事情も大きく違います。日本は日本独自のFInTechの発展を考える必要があります。

たとえば、アメリカでFinTechが大きく発展したのは、デジタル機器やスマホに慣れ親しんだミレニアル世代が人口の一番多く(約40%)を占めていることが一因です。しかし小子高齢化がすすんでいる日本ではミレニアル世代は31%ほどにとどまっています。

また、スマホやタブレットの保有率も海外にくらべるとはるかに少なく、海外ではスマホの保有率が90%に達する国もあるのに対し、日本では50%にもなるかどうかです。当然ながらモバイルバンキングのようなサービスの利用率も海外に比べると極端に低くなっています。

理由としては、ATMが多く、コンビニに設置してあるものも含めて、24時間気軽に利用できること、セキュリティに対する不安がぬぐえないこと、現金第一主義の高齢者が多いことなどがあるようです。日本で一番人口が多いのは高齢者ですし資産を一番多く持っているのも団塊の世代か、それ以上の世代です。日本ではミレニアル世代よりも高齢者に狙いを定めた方針をとるほうが現実的なのです。

団塊の世代、それ以上の世代はスマホの保有率は低くても、PCの保有率は結構高いのです。インターネットを趣味にあげる人も意外と多くいます。インターネットを日常的に利用する高齢者はPCを持っていない高齢者に比べると投資商品の保有率も高くなっているというデータもあります。スマホを利用した『早い・安い』がかならずしも成功するとはいいがたいのが日本の状況です。