日本でビットコインが広く知られるようになったきっかけは、やはりマウントゴックス事件です。日本人は、「ビットコイン≒詐欺」と思っている人も少なくないようですが、これにはいくつか誤解があるようです。

マウントゴックスは当時は世界最大のビットコイン取引所でした。最初は別の人がトレーディングカード交換所として始めましたが、のちに事業転換してフランス人のマルク・カルプレスに売却したのです。この事件の概要は、お客から預かっていたビットコインが何者かからの不正ハッキングに合い、大量に盗まれたというものでした。

ところが、フタをあけてみると、盗まれたものも多少はありましたが、実はマルク・カルプレスによる横領だったようです。経営状態もずさんそのもので、帳簿も彼自信の手で何度も書き換えられていたという証言もありました。実際、彼以外の従業員には何の権限もなく、事件が明るみに出て初めて内情を知った社員がほとんどでした。

マウントゴックス社は東京地方裁判所に民事再生法を申請しましたが、債権者の多くが海外におり、調査をすすめることが困難と判断し、破産手続きをとることになりました。損失額は2兆6630億円にのぼるとされています。

マウントゴックスはビットコインは、あくまで取引所であり、ビットコインを発行する権限があるわけではありません。ビットコインを両替したり、売買したりする会社でした。ビットコインの管理には、本来はウォレットとよばれる機能が必要になります。文字通り、ビットコインを入れておくお財布のような役目をするのです。そのウォレットを自分のPCなどにダウンロードして、そこから取引所にコインを預けて取引をし、取引が終わったらまた自分のウォレットにもどして管理する。これがビットコイン管理の王道とされています。

しかし、マウントゴックスの利用者の多くはウォレットにビットコインを入れることなく、会社にあずけっぱなしにしておいたようです。これが悲劇のもとでした。自分のウォレットで管理していたら、コインを失わずに済んだのです。まだ流通の歴史が浅く、何より数字の羅列だけで実体のないものですから、お金という感覚が薄い人もいたのかもしれませんね。

この事件が発覚して以来、日本でのビットコインの印象はうさんくさいものになってしまいましたが、世界で見れば非常に根強い人気を持っています。実際、ほかのビットコイン取引所は、この事件とは無関係であるとの声明を出しています。ビットコインが自国の通貨同様に流通している国もあるくらいです。

まず、ビットコインそのものに欠陥があったわけではないことに注意してほしいのです。ビットコインを守るシステムやセキュリティに欠陥があったこと、何より経営者に難があったことでおきてしまった事件であり、ビットコインの中立性やその機能に問題が生じているわけではありません。

ただ発明されてから日が浅く、とくに日本ではまだほとんど流通していないので、利用するまえにじっくり研究する必要があります。