FinTechという言葉は、いったいいつごろから使われ始めたのでしょうか?じつは、はっきりとしたことはわからないのですが、1972年には、アメリカの雑誌で、アメリカのある銀行の頭取が『FinTechとは、ファイナンスとテクノロジーを組み合わせた造語で、銀行の専門知識とコンピュータを組み合わせること』といった内容のことを話しています。もう少し時代が進んで、1990年代に入ると、アメリカのシティバンク(当時の社名はシティコープ)の資料にFinTechという言葉がみられるそうです。

銀行をはじめとする金融業界は、かなり早い段階でITテクノロジーの導入をすすめてきました。1950年代から勘定処理のIT化が進められていきました。しかし、金融業のIT化は『金融IT』と呼ばれるのが一般的で、FinTechという言葉はほとんど使われることはありませんでした。

しかし、インターネットが普及しはじめると同時にFIntechという言葉もだんだんと一般に浸透し始めます。インターネットが発達するにつれ、ネットオークションやネット通販など、新しい形のサービスが生まれてきます。それに伴いオンライン上で決済ができるサービスがもとめられるようになりました。

こうした流れをうけて、1998年インターネット上でのクレジットカード決済サービスを提供する『PayPal』が創業されたのです。この時期はシリコンバレーでIT系スタートアップ企業が次々と誕生しています。2002年にPayPalはインターネットオークションのeBayに買収されました.PayPal創業者たちはその資金をもとにYouTubeを創業したり、フェイスブックやアリババに投資して成功を収めます。

PayPalの成功を皮切りに、その後もITを駆使した金融サービスを提供する会社が次々と創業されていきます。決済サービスだけでなく、家計簿を自動入力できるアプリを開発した会社や、銀行から融資を受けられない企業家と投資先を探している個人を結びつけるソーシャルレンディングが登場します。

アメリカはクレジットカードがないと、毎日の生活に非常に不自由をしいられます。クレジットカードを作るには、クレジットヒストリー(クレジットカードを利用した履歴)が必要になりますが、社会に出て間もない若者や移民はクレジットヒストリーがなく、カードを作るのが困難です。

そこに、SNSやECサイトでの購買履歴をもとに融資を受けつけるサービスが登場しました。インターネットの発達により既存の金融機関とはまったく違う手法を使って、融資枠からもれていた人が融資を受けられるようになったのです。これまで融資を受けていた人でも、よりよい条件で融資を受けることができるようにもなりました。

ここ数年でFInTech関連のベンチャー企業への投資金額が急増しています。2011年にはおよそ25億ドル(約2800億円)だったのが、2015年度には223億ドル(約2.5兆円)に膨れ上がっているのです。

こうした新興のFinTec企業は『破壊者(ディスラプター)』と呼ばれています。文字通り、既存の金融の仕組みを破壊してしまいかねないやり方でケタ違いの収益をあげている企業がすごい勢いで増えています。金融業は破壊すると儲かる業界なのです。